promised tune
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光と風。体中が張り裂けそうな衝撃が、左目を中心に何度も沸き起こる。 肌がちりちりと焼けるように痛む。 こんなに強い力を、ヴァンは弱いと言い切り死にかけの身体で押さえ込んでいたのか。 いや、ヴァンにローレライを奪われる前の自分も、いったいどうやってこの力を身体の内に留めておけたのだろう。 ――――ローレライ… 必死で呼びかけるが、襲いかかる激しい痛みに意識が遠のく。 (駄目だ、ここで倒れたら…まだ、大地降下が…あるのに…) 真っ白な世界。その中で、自分の輪郭すらわからなくなりそうだ。 唐突に、ルークの耳に様々な音が飛び込んできた。 (これは…?) かつてライガの前であったように、世界が叫んでいた。全てのものが声をあげ、痛いほどの音量でルークの耳を叩く。 その中にルークは、ローレライの声を聞いた気がした。 ――――ローレライ! もう一度呼びかける。 声にならない叫び。しかしそれは確かに、自分の内側に届いた、と思った。 聖なる焔の光よ… 突然、身体が軽くなる。 沸き起こる光と左目の灼熱感は続いているが、全身を叩いていた衝撃がなくなった。 潮が引くように小さくなっていく世界の声。 その中で、ローレライの声だけが残っていた。 「ロー…レライ…」 ルーク、私は今、お前の内に繋がれている… ふと近くで名を呼ばれ、ルークが顔を上げる。 真っ白な世界の中に、ひときわ輝く光の塊があった。 足元まで純白の世界。それはどうやらアブソーブゲートの中ではないように思えた。 「ここは…?」 お前の内側であり、時から切り離された場所だ アブソーブゲートは音素の力が集まる場所。わずかだが私の影響力が増しているからだろう、こうして対話ができるのは 「ローレライは…どうなったんだ?俺の中に?」 栄光を掴む者が第七音素を介し、お前の中の宝珠と私の結び付きを故意に強くしたのだ 私はここから逃れる術を持たない。私にはこの鎖を解く力などない 悲しそうにそう言って、ローレライはしばし沈黙する。 私はかつて栄光を掴む者に私の解放を託した。しかしかの者は私の鍵≠長くその身に宿しておく事ができなかった ユリアのために作られたローレライの鍵。ユリアの子孫にあたるヴァンであっても、簡単には扱えない物だったという。 そして私は次にお前と、聖なる焔の礎に鍵を与えた。時を遡った影響からか、完全な第七音素であるお前達はいまや鍵とほぼ同化している状態にある 私の力をもってしても、お前達から鍵を奪う事はできない。それはつまり、私からお前達の時の流れに干渉することはできないという事だ… その声は小さく、疲れたような響き。 もはや私を解放する術は、お前たちのみが持っている 私にはただ希う事しかできない。聖なる焔の光よ…私を、解放してほしい 致命傷を負ったヴァンは、これ以上ルークたちに手を出せないだろう。ルークが望めば、このままローレライを解放しないままその一生を終える事もできるかもしれない。 その時ローレライはユリアの望みどおり、星とともに滅びを迎えるだろう。 「…何のために俺は生まれたのかって、師匠に聞いたことがあった。その時…師匠は『何かのために生れなければ生きられないのか』って俺に言ったんだ」 小さな声でルークが言った。 「俺、ずっと探してた。その答えを」 聖なる焔の光… 「でも、やっぱりわからない。このまま答えなんて見つからないかもしれない。でも、それでいいんだって思えたんだ」 探しながら、迷いながら生きていくのも。 「ローレライのおかげで、もう一度アッシュに会えたから」 一人じゃないと思うことが出来た。 「だから…」 この腕に抱えられるだけ、大切なものを抱えて生きていく。 この身体で支えられるだけ、大好きな人たちを支えて生きていく。 そのために…ここで立ち止まっているわけにはいかない。 「俺にどれだけのことができるかなんてわからない。でも、アッシュと約束したんだ…二人で未来を…記憶の先を、見るって」 ヴァンがこの世界を壊そうと計画していた。しかしヴァンを倒そうとも、この世界はまだまだ不安定な要素を抱え込んでいる。 大地を降下させる。プラネットストームを止め、予言に縛られる事のない世界を作る。 その先にどんな世界が出来上がっていくのか、共に見届けるために。 「ローレライの解放も諦めたりしない。恩を返すって訳でもないけど…俺がそうしたいと思うから」 だから今は力を貸してほしい、と。 ルークの言葉に、ローレライが笑ったように思えた。 |