promised tune




雪のように、記憶粒子が降り注ぐ。上から下へ、上から下へ、上から下へ…
「そんな…」
「アッシュが、消えた…?」
ナタリアが口元を押さえ、アニスはおろおろと辺りを見回す。
一瞬。ほんの一瞬だったのだ。
ガイが自分のレプリカと対峙し、決着をつけようというまさにその瞬間。

『さよならだ』

その気迫と、どこか泣き出しそうにも聞こえる声に、アッシュの治療をしていたティアやナタリアもガイを振り返った。
そして視線を戻したその先には…アッシュの姿はなかったのである。
「ご主人様…しっかり、ですの!」
それまでアッシュが横たわっていた場所には、彼の存在を証明するかのような血の跡。
まだ乾ききっていないそれを見つめながら呆然とするルークに、ミュウが耐えられなくなったように声をかける。
「探しましょう!」
「待ってナタリア、闇雲に動くのは危険だわ」
「でも…あの怪我で遠くへ行けるわけがありませんわ!きっとまだこの近くに…」
その時、ジェイドがハッと顔を上げた。
「誰です?」
言い終わらない間に、一つの影が壁の彫刻の影から躍り出る。
「っ…教官!」
それはとっさに身構えたティアたちをすり抜け、倒れ付すヴァンの元へ。
リグレットは手に持った小さなビンのふたを開け、ほのかに輝く液体をヴァンの口元へ注いだ。
「何をするつもりなんです、教官!」
小さな詠唱の言葉が途切れ途切れに聞こえる。
「光よ、此処に来たれ!レイズデッド! 」
その声に応えるかのように、ヴァンの指先がピクリと震えた。
「まだやるつもりですか…?」
「あれだけの傷で蘇生するなんて…総長の身体どうなってんの…?」
身構えるアニスたちに、リグレットの銃口が向けられる。
「動くな!お前達に危害を加えるつもりはない!」
「銃向けて言われたって、説得力ないよ!」
苛立ったようなアニスの声に、ジェイドの詠唱が重なる。
「…ふ…もういい、リグレット。私が…このまま死んだとして、困るのは、こやつら、だ…」
かすれた声、皮肉な笑み。やっとのことで搾り出しているような、切れ切れの言葉。
「閣下…」
うなずいて、リグレットが銃から手を離した。
ガシャン、という重い音。
「………」
譜術の発動を抑えたまま、ジェイドはヴァンの真意を測るかのように目を細める。
ティアやナタリアもまた、武器を構えた姿勢のままヴァンのほうを見つめていた。
蘇生した事に驚くほどの深手。その顔色は血の気が引いたままで、今この耳でヴァンの声を聞いていなければ、死んでいるのではないかと思えるような姿だ。
「どういう…ことなの、兄さん」
「このまま…解き放ってなど、やるものか…」
小さな声だったが、それはルークたちのところまで辛うじて届いた。
「ロー…レライを、ルークに…戻してやろう、と…言っているのだ、メシュティアリ…カ」
「!」





BACK / NEXT