promised tune
|
―――深淵と天を繋ぐもの この星の記憶紡ぐところ 祈りよ形を成せ 残されし第七の座に旋律を――― 「…!」 「ぐぁっ…!?」 激しい震えが、アッシュとヴァンを襲う。 思わず膝をつくアッシュを、アニスが庇うように前に出る。 そしてヴァンは、己の剣を地面に突き立てることで辛うじて立っていた。 「それは…メシュティアリカ…何故…?」 ―――永久に結ばれし黄金の鎖よ 時を超え我が前に力を示し 彼方なる光を此処に留め置かん――― 大譜歌の旋律。 そこに乗せられた言葉は、ルークがユリアの歌声として聞いたものだった。 それはまさに、ローレライとの契約の証そのもの。 ルークが眼帯をはずすと、その左目にはアッシュとヴァンが金色の鎖に絡めとられているのが映る。 「うあああああああっ!」 まるで泣くように吼え、ルークは剣を振り上げる。 その切っ先がヴァンの背に潜り込む、その瞬間。 ―――師匠…? 微かに、ヴァンが笑みを浮かべたように思えた。 それは安堵の表情のようで、ルークは胸が苦しくなる。 「…っぐ…なる…ほど。っそれ…がロ…ライの残…た、お前…の…」 ルークの剣で、破壊しようとしていたはずの大地に繋ぎとめられたまま。 呟きを最期まで口にしないまま、ヴァンの瞳から光が消える。 「やった…のか」 「兄さん…!」 皆、放心したように座り込む。 しかしその時、走り出てきた影があった。 「なっ…?」 「ガイ!?」 「違う、お前は…!!」 その顔はガイと瓜二つで、腰に下げた剣が左右逆であることを除けばその服装さえもよく似ていた。 「お前は、あの時の…!」 ガイに重傷を負わせた、レプリカ。 その抜き放った剣が、向かっていった先は… 「…!!」 「アッシュ――――――っ!!」 まるで、スローモーションのように。 ルークの伸ばした腕を、ティアの投げたナイフを、ナタリアの放った矢を、そして追いすがるガイの剣を。 すり抜けて、いまだ動くことの出来ないアッシュの元へ。 「がっ…!?」 そしてまるで先程のルークとヴァンを見ているかのように、その剣がアッシュの背中へと吸い込まれていく。 「やめろっ!」 その肩にガイが切りつける。 「…何故だ?」 レプリカのガイは、感情の見えない声で返した。 「教えられたぞ。故郷を、家族を奪われたお前の過去を。復讐の機会がありながら手を出そうとしないお前の迷いを」 「何だと?」 「アッシュ!しっかりしろ!」 ルークの腕の中で、アッシュは目を閉じたまま動かない。 「アッシュ!アッシュ!?」 駆け寄ったナタリアとティアが、懸命に治療を施す。 見る間にその血は止まり、傷は塞がっていった。 しかし、アッシュは目を閉じたまま。 「だめですわ…ここでできるのは、これくらいが精一杯…」 「早くどこか医療施設のある場所へ連れて行かなくては」 「…っ!」 深すぎる傷は、譜術だけで直すことは出来ないのだ。 アッシュをそっと横たえ、ルークは剣を抜く。 「お前…何なんだよっ!」 怒りに任せて振り下ろすその剣を、レプリカのガイが受け止める。 「私は、ガイだ」 「認められないな、そんなことっ!」 「もお、ややこしいよぉっ!どっちが本物のガイ!?」 服装までを似せたのは、こうやって混乱を誘うためだったのだろうか。 それとも… 「お前はこうしたかったんだろう?」 切り結ぶガイの目の前で、レプリカのガイが笑う。 自分には迷いはない。 オリジナルに出来ないことだって、できる。 オリジナルを超える。 だから… 「私が、お前になるんだ」 「嫌だね!」 泣き笑いのような顔で、ガイが剣の鞘をたたきつけた。 「!」 生まれた一瞬の隙に、その間合いへ飛び込む。 「さよならだ」 そして躊躇することなく、その胸を刺し貫いた。 どさり、と倒れこむレプリカのガイ。 その死を確認して、ガイはゆっくりと剣を引き抜いた。 「アッシュは?大丈夫なのか?」 状況が上手く飲み込めず、倒れたレプリカのガイを見ていた一同は、その言葉にハッと顔を上げる。 「アッシュ…アッシュ?」 先程、意識のないアッシュを横たえたはずの場所。 しかしそこには、僅かな血痕が残るばかり。 「どこにいったんだ!アッシュ!?」 「そんな…動けるような傷では、ありませんでしたわ」 「気配も足音も…しなかったよ?」 「私としたことが…何も気づきませんでした」 ルークは、アッシュがいたはずの場所にフラフラと近づき、崩れ落ちる。 「アッシュ…どこだよ、アッシュ!」 その声が響いても、帰ってくる答えはない。 ただ雪のような記憶粒子が、慰めるように降りそそぐのみ。 どうしようもなく空っぽに感じる胸を押さえて、ルークは気づかないうちに涙を零していた。 |