promised tune




「え…?」
「ユリアの力か…無駄だ!譜歌はその旋律だけでは意味を成さんのだからな」
ティアが唇を噛む。
「ごめんなさい、ルーク…今の私は、ユリアの譜歌の全てを解いているわけではないの…」
そう言い合う間にも、深く切りつけられたガイが鮮血を撒き散らしながら倒れこむ。
「がっ…はっ…」
激しく咳き込み、喉の奥からも血を吐き出す。
「ヒール!」
ナタリアが駆け寄り、その身体を治癒の柔らかい光で包む。
「いけませんね…」
アッシュとアニスが盾となってヴァンをひきつけている間に、ルークがガイをティアの近くまで引きずった。
「ガイ!大丈夫か…?」
「あ…あ、まだ何とか生きてる…ぜ」
立ち上がろうとするが、その足に力が入らない。
「きゃぁっ!」
アニスが弾き飛ばされる。
「ローレライ…お前が本当に俺の内にいるのなら、出し惜しみせずその力を貸せっ!」
アッシュが叫ぶ。
それに答えるように、アッシュの右目から光がほとばしった。
「…!なるほど、それも道理だ…しかし、ローレライの力が互角になったところで、本来の技の差は埋められまい!」
「うおおおおお!」
より激しくぶつかり合う剣と剣。
火花すら散らして、アッシュとヴァンは斬り合う。
アッシュの剣も同じようにローレライの力を纏っているようだったが、そもそもアッシュに剣を教えたのはヴァンである。
力量の差は徐々に現れ始めていた。
「助かったよティア。動けそうだ」
ガイの声に、ルークはハッと我に返る。
「せめて大譜歌の象徴がわかれば…」
ティアの呟きが耳に届いた。
七つのユリアの譜歌。それを繋げた大譜歌は、個々の譜歌とはまた違った象徴を持つのだと、いつかティアが言っていたことを思い出す。
「象徴…」
―――深淵と天を繋ぐもの…
「!!」
ふいに、頭の中に蘇る。
ローレライに見せられた、ユリアの墓所での過去の姿。
そこで聴いた歌は…
「ティア…聞いてくれ。もしかしたら、これが…」
「ルーク?」
ルークがティアに囁く。それに気づいたジェイドが、時間を稼ぐためにその腕から槍を取り出した。
「ほう…かの死霊使い%aと直に剣を交えることが出来るとは…光栄ですな」
「やれやれ、体力仕事は専門外なのですがね」
アッシュとジェイドの両方を相手にしても、ヴァンは息すら乱さずその攻撃を受け続ける。
「くっ…割に合いませんねぇ…」
ジェイドの額に汗が浮かぶ。
その時、ティアの身体が唐突に青い光に包まれた。
「!」
「ありがとう、ルーク…!」
「まさか…」
それはティアが譜歌の象徴を正しく理解した証だった。
「メシュティアリカ…いいだろう、謡ってみるがいい」
ヴァンは地面をけり、ジェイドたちと距離をとる。
ティアの唇から、歌が零れ出した。
…トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ…
「…!」
旋律を受け取るように、ゆらり、とヴァンを包んでいた第七音素の光が揺らぐ。
それは同時に、アッシュにも起こっていた。
「消えていく…どうやら、正しく大譜歌を理解したようだな。ここからは人と人の戦いだ」
肩で息をしながら、アッシュは剣を構えなおす。
「面白い。では、再開するとしよう!」
同時に地面を蹴る。
「負けませんわ…!」
「あ…アニスちゃんだって、まだまだいけるもんね!」
「俺も、混ぜてもらうぜ」
「……戦慄の戒めよ、死霊使いの名において具現せよ」
それぞれに己を奮い立たせ、傷だらけの身体を再び激しい戦闘に投じる。
ルークもまた、ヴァンに向かって剣を構えた。
「いくぜ!」
「お前ごときの剣が私を倒せるものか!」
ヴァンがルークの剣先を薙ぎ払う。
バランスを崩したルークの背に、迫る切っ先。
「ルーク!危ない!」
ナタリアの悲鳴。しかしそれすらかき消すように、凛とした歌声が響き渡った。





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