promised tune




「すごい音素を感じるですの!」
ミュウが怯えたような声で叫んだ。
アルビオールで空を駆けてもなお遠い、世界の最果て。
辺りには、光の欠片が雪のように降りそそぐ。
それは凝結した音素の光、記憶粒子だった。
「ふわー、綺麗って言うか、なんかすごい迫力…」
「ここは最大セフィロトの一つ、プラネットストームの生まれる場所でもありますからね…」
ジェイドですら、どこか緊張したような声で答える。
「まずはこのアブソーブゲートのパッセージリングを書き換え、そしてラジエイトゲートから同時に起動させる…急がなくてはいけないですわね」
「気をつけて進めよ、何が待ってるかわからないんだからな」
ガイが油断なくあたりを見渡す。
「兄さんが…私たちを止めに来るのかしら」
「もちろんだ」
ティアが呟いたとき、入り口の奥から突然答えた声。
一行がハッと視線を向けると、そこには歩みでてくるリグレットの姿があった。
「教官…!」
「久しぶりだな、ティア。閣下はこの奥でお前たちを待っていらっしゃる。…本来ならこの場で私がお前たちを始末してしまいたいところだが、閣下のご命令なのでな…さあ入るがいい」
凛と背筋を伸ばしてそう言うと、リグレットはそのまま記憶粒子の降りそそぐ闇の中へと姿を消す。
よほどヴァンを信じているのか、加勢はしないつもりのようだ。
「やっぱりいるのか、師匠…」
ルークにもわかっていたことだった。アブソーブゲートで、ヴァンが待っていると。
一度、剣を交えた場所。
ヴァンならば、同じように相対することを選ぶに違いない。
「躊躇していても仕方がない。行くぞ」
その声に、ルークは隣に立つアッシュを見る。
「うん、行こう」
そうだ。今度はアッシュも共にいる。
ルークは深呼吸をして、一歩踏み出した。






「えらく入り組んでるな…」
「ここはこの世界にとって重要な場所です。簡単に奥まで辿り着かれては困りますからね」
交差しあいながら伸びる長い廊下、幾つも置かれた仕掛け、そしてワープを使った昇降。
最大のセフィロトの内部は酷く入り組んでいて、ルークたちは何度も迷いかけた。
急がなくてはという焦りが、なおさらその構造を複雑に見せているのかもしれない。
「ヴァン揺将はなぜ、ここを決戦の場に選んだのでしょうね」
ふと思いついたように、歩きながらジェイドは首を傾げる。
「パッセージリングを操作するのが目的ではないのでしょうか?私たちも同じように考えて、ここに来ているのですから…」
ティアが答えるが、ジェイドはまだ納得のいかない表情だ。
「世界を支えるセフィロトの力は、かなりバランスが崩れていました。ここでなくても、ヴァン揺将程の力があれば連鎖的に崩壊を招くことも可能なはずです」
「そんな細かいことまで、考えちゃいないんだろうよ」
苦笑したのはガイだった。
「たぶん…決着を付けるのに相応しい場だとあいつが思ったからなんじゃないのかな」
なし崩しに大陸を落としていくのではなく、決着をつけた後に全てを無に帰す。
そこから新しい世界を作るために…
「確かに、考えそうなことだな」
「おや、アッシュとガイの意見が合うなんて珍しいですね」
「そうでもないぜ?なあ」
「…ふん」
そっぽを向いたアッシュを、楽しそうにアニスがつつく。
「何なにぃ?アッシュってば、いつの間にガイと仲良くなったの?」
「あら、それは良いことですわ!」
ナタリアまで調子を合わせる。
アッシュは無言のまま、歩調を速めた。
「ちょっとぉ、早いってば!」
「照れているのかしら…」
「そうですわね、きっと」
皆、あえて緊張を解すかのように軽口を叩く。
それでも神経を尖らせているのは、小さな魔物が現れるたびに皆が一斉に反応することでも窺うことができた。
自分たちだけでなく、世界中の人々の命がかかっている。
それはとても重く、一行の肩にのしかかるようだった。
そして。
「来たか…」
記憶粒子の荘厳な光が降りそそぐ、広大な空間。
奥にはまばゆいばかりの輝きを放つパッセージリングと、あふれ出る音素の奔流が見えている。
パッセージリングのコントローラーの前に、瞑想をするようにヴァンは静かに佇んでいた。





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