promised tune
|
「よお、待ってたぞ」 「初めまして、俺は…いや、私はルーク・フォン・ファブレといいます」 「ピオニーだ。話は俺の素直で有能で美しいジェイドから聞いてるぞ」 「は…?」 「陛下…時間がないので冗談は控えていただきたいと、昨日あれほど…」 「あーあー、わかったよ。洒落の通じんヤツだな、相変わらず」 この人は相変わらずつかみどころがない。 ルークは思わず苦笑して、しかし一瞬でそれを改めた。 こんな砕けた調子で話していても、ピオニーはマルクトの皇帝なのだ。 「ここに居るほかの者から、アクゼリュス崩壊の経緯とルグニカ平野の危機について詳しい話は聞いた。…お前とアッシュについてもな」 「キムラスカ側からアクゼリュスの崩壊はマルクトの陰謀であり、兵をもって報復する…という書状が届いておる。既に、兵をカイツールに集めているとの情報もあり、わが国の議会もこれに対しキムラスカに書状を既に送ったのじゃがな…」 ピオニーの隣で、豊かな白いあご鬚を撫でながら老将軍が言った。 「わが国としても、黙って領内に兵を侵入させるわけにはいかぬ。既にルグニカ平野に向けて艦隊を編成しているところだ」 また別の将軍が言葉を継ぐ。 「でも…それでは結局、両軍とも被害にあうことになってしまいます!既に世界の崩落は始まっているのですよ!」 ナタリアの言葉に、ピオニーは頷いた。しかし、その表情は冴えない。 「もちろん、それも知っている。だがキムラスカが兵を引かない限り、こちらとしても和平を進めるための次の手が打てないのが現状だ」 いくら帝国といえど、皇帝の一存で全てが決まるわけではない。 議会がこれ以上の譲歩をしないといっている以上、最低限キムラスカがマルクト側への侵攻を止めなければ和平の席を設けることができないのだ。 「…キムラスカの言い分はこうだ。王女ナタリアおよび親善大使ルークを殺害せし罪≠ニ…まずはこれを覆し、停戦に持ち込みたい。そこでルーク、早速で悪いんだがな…」 「はい、俺…バチカルへ行きます」 ナタリアとルークはアクゼリュスで死んだ、というキムラスカの認識を変えなければいけない。 そのためには、二人が顔を見せるのが一番手っ取り早い方法だろう。 「ナタリア殿も、よろしく頼む。」 「わかりましたわ。お父様には…確かに、ピオニー陛下のお気持ち、伝えてまいります」 「ガイはまだ移動に耐えられるほど傷が治っていません。このままグランコクマで治療を続けます」 ジェイドの言葉に、ガイは慌てて首を振った。 「待ってくれ!俺は…ルークと一緒に行きたいんだ」 「ガイ…」 懇願する視線を振り切るように、ピオニーは首を振る。 「まあ気持ちはわかるがな、今は迅速な行動が鍵になる。歩くだけで精一杯じゃ話にならんぞ。それと…タルタロスも動かすのに人手が必要だ」 「私はルークたちと共に、もう一度ピオニー陛下の名代としてインゴベルト国王へ謁見を求めに行きます。ガイは私の代わりに、タルタロスで地核の振動周波数を調べにパッセージリングまで赴いてほしいのです。振動周波数の計測をするには、譜業機関の扱いに慣れた人物が必要ですからね」 「それは…」 「そっか、ガイは譜業機関得意だもんな」 なるほど、と頷くルークに、ガイは思わず肩を落とす。 「タルタロスはまだ整備中ですが、シェリダンから計測器が届くまでには仕上げられるでしょう」 「ルーク、ガイのことは心配するな。責任を持って面倒を見る」 「はい、わかりました。よろしくお願いします」 「ガイも、そうむくれるな。もちろんお前一人に地核振動の調査をさせるわけじゃない。アッシュもいるぞ」 それはガイにとって喜ばしい情報とはならなかったようで、眉根を寄せて情けない声を出す。 「……ピオニー陛下、やはり俺は…」 「自信がないならずっと寝ていてもかまわんぞ。計測は俺一人でも十分だ」 「何だと…?」 そのまま喧嘩に発展しそうな雰囲気に、呆れた表情のイオンが割って入る。 「二人とも落ち着いてください」 「もお!イオン様の血圧が上がって倒れちゃったらどうするんですか!」 「アニス…それでは老人扱いですよ…?」 「はぅあ!そんなつもりは…」 「全員でゾロゾロ行っても仕方ないだろう。俺は二手に分かれるのに賛成だ」 イオンはジェイドを見る。 「ジェイド、確認しておきたいのですが…地核の振動周波数を調べる予定のセフィロトは、封咒が解かれているのですか?」 「その通りです。先日調べに行かせたところ、内部まで入ることが出来ました」 「恐らく…ヴァンのヤツが入った後なんだろうな…」 「しかしパッセージリングが破壊された形跡はありません」 「なるほど、わかりました。では僕はルークと共にバチカルへ向かいます。僕が一緒であれば、キムラスカも無理に謁見を断ることは出来ないはずですから」 「そうですね。お願いいたします」 「他はどうだ?」 ピオニーの問いかけに、全員が―――一部はしぶしぶ―――頷く。 「それでは、頼むぞ」 「はい!」 |