promised tune
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アルビオールが向かった先は、グランコクマだった。 ノエルからの連絡を受けて、着陸地点に皆が集まっている。 「ルーク!…イオン様!!」 ハッチを開けて降り立ったアッシュの後からルークとイオンが続くと、真っ先にアニスが飛びついてきた。 「ルーク、良かった…無事だったのね」 「よかった、心配していましたのよ」 「ご主人様!うれしいですの!ミュウは信じてたですのーー!」 ルークの足元で、ぴょんぴょんとミュウが跳ね回る。 ずいぶん長い間合っていなかったような気がして、ルークはミュウを抱き上げた。 「ただいま、ミュウ」 「みゅう!みゅうみゅうみゅう!」 「おいミュウ、ソーサラーリングがあるんだからちゃんと喋れって」 「嬉しすぎて言葉が出ないんですの!みゅううううう!」 「イオン様、ご無事なようで何よりです」 「すみません、ご心配をお掛けしました」 ジェイドとイオンが話すその横でようやく気付いたようにアニスが驚きの声を上げる。 「あ、ルーク!その髪…どうしたの?」 「へへへ…似合うかな」 「似合っていると思いますよ。ねえアッシュ?」 「何故俺に聞く…?」 絶対に感情を出してやるものか!という気合の入った仏頂面でアッシュが答えると、ジェイドはなぜか可笑しそうに笑った。 「おかえりなさい、ルーク」 「ああ…ただいま!」 ルークは笑い、そしてふと真顔にもどる。 「そうだ、ガイは?怪我したって聞いたけど…大丈夫なのか?」 アルビオールの中でアッシュから聞いていたこと。 ガイが自分のレプリカと思われる男と戦い、重症を負ったのだと。 顔を見合わせるティアたちから意識は回復したようだと聞いたルークは、ミュウを抱いたまま宿屋へと駆け込んだ。 「ガイ!」 受付で聞いたガイのいる部屋へ、ノックもそこそこに入っていく。 「……。」 ガイはベッドに寝転んだまま、ルークのほうに背を向けていた。 寝ているのか、ルークの呼びかけにも返事がない。 「…ガイ?どうしたんだ?やっぱり…まだ話せないくらい傷の具合が悪いのか…?」 「そうじゃない…」 壁のほうを向いたままのガイがボソリと言った。 「…お前にあわせる顔がないんだよ、ルーク」 ガイが喋ったことだけで安心のあまり脱力していたルークは、へなへなとその場に座り込んだ。 ああ、よかった。 もっと言いたいことはあったはずなのに、ルークの胸にはその言葉しか浮かばない。 「あのなぁ、ガイ……生きててくれてよかった」 「ルーク…」 ガイはルークに合わせる顔がないと言ったが、ルークはルークでガイに謝りたいことがたくさんあった。 「俺のほうこそごめんな、ガイ…俺…お前が本当はマルクトの貴族で、ホドの出身だってこと…知ってたんだ」 だけど、知らないふりをしていた。 もぞもぞと動くと、ガイは起き上がる。 「俺だってそれを隠してたんだ。お互い様さ」 そういって、ようやくルークの顔を見た。 「そうかな、へへ…」 ガイは少し驚いた顔をして、ルークの髪を覗き込む。 「ルーク、お前…髪、切ったんだな」 「うん、俺さ…やっぱりまだまだ弱いんだ」 「…どうしたんだ?急に…」 ルークの言葉に、ガイは首を傾げる。 その首にまだ残る傷跡が、ガイの受けた傷の深さを物語っていた。 「後先考えないで、その場限りで、どうしたらいいんだろうって迷っちまう。傷つけたくないし、傷つきたくないって…決められないでいるうちに、手を伸ばしていたら救えたかもしれないものをたくさん見落とした」 そしてまた、たくさん後悔した。 それでもそうやってもがきながらも、進んでいく先が未来なのだと信じたい。 「これからもきっと、そんなに簡単に変わることは出来ないかもしれない。それでも…変わっていきたい。そう思ったんだ」 「だから…髪を切った?」 「変かな?」 「お前らしいよ」 ふっと笑うガイ。 「俺も…ようやく覚悟が決まったみたいだ」 そう言うとベッドから起き上がる。 ルークは振り返ると、入り口に佇んでいたアニスを見つけた。 「アニスも、ごめんな」 一瞬きょとんとしたアニスが、むくれた顔で腰に手を当てる。 「何でルークが謝る必要があるの?私のほうこそ…みんなを裏切って…迷惑掛けて…イオン様にも」 「はいはい、懺悔大会はそこまでにしませんか」 後ろから手を叩く音がしたかと思うと、ジェイドが部屋に入ってくる。その後ろに、ナタリアやティアの姿もあった。 「そうですわ、わたくしたちにはまだまだ為すべき事がたくさんあります」 「そうだよね。…ねえルーク、ルークが他に知ってて言わないことって、たくさんあるんだよね、きっと」 「それは…」 ないといえば嘘になる。 アニスの横に歩み寄ったイオンが、そっと首を振った。 「アニス、ルークの記憶はあくまでルークの生きた世界のものなんですよ。それを知ってどうするんですか?」 「ルークが言わないでいることがあるのだとすれば、きっとそれは聞かなくても良いことなんです。少なくとも、その時には」 「大佐…イオン様…はい。ごめんね、ルーク」 「そうだな…ルークが知っているからといって、過去は変わらない」 ぼそり、とガイが呟く。それにジェイドが頷いた。 「ええ、変えられるのは常に、未来だけです」 「わたくしも大佐に言われましたわ。」 未来への導が存在するとき、私たちはかくも容易くそれに縋ってしまう。 でもそれは定められたものではなく、あくまでルークやアッシュの見た世界の可能性の一部でしかないのだ。 何を選び取るのかは、それを知った私達の側に託されている…と。 「さあ、今はピオニー陛下のところへ行きましょう。何としても、戦争が始まる前に次の手を打たねばなりません」 顔を上げて、ルークは一行を見渡す。 「よし、行こう」 |