promised tune
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*** 空を横切る銀の影。 アルビオールがナム孤島へ着くと、監視室の映像でそれを知ったルークたちは、島の上部にある僅かな平地へと向かった。 風の吹きぬける音。 短くなった髪が首筋を撫でるくすぐったい感触。 ルークは着地場所を求めてアルビオールが旋回するのを、じっと見ていた。 「アッシュさん!かなりギリギリになりますが、島の上部の平地に着地しようと思います」 「わかった」 ノエルは深呼吸すると、操縦桿を握り締める。 アッシュは次第に近づいてくる島の上に、小さくルークの姿があるのを見つけた。 心のどこかでホッとするのと同時に、ガイに言った言葉を思い出す。 俺はルークのほうが好きだが 奇遇だな、俺もだ ルークが好きだ。 だがきっとそれは、ただ甘ったるい好意の感情ではない。 きっと…誰にもわからないだろう その存在にどれだけの物を奪われたか、どれだけ心を引き裂かれたか 自分のものであるはずの場所で生きている、その存在全てを憎んでいた。 ―――憎んでいた、はずだった… 僅かな振動と共に、アルビオールは狭い平地に着地した。 ノエルの合図でベルトを外し、アッシュはハッチをくぐる。 そこには予想通り、ルークがいた。 アッシュを見たルークは、花のように笑う。あるいは、生まれたての、喜びの感情をそのまま笑みに乗せる赤ん坊のように。 その腕を、思わず引き寄せた。 「…っ?」 吹き抜けた強い風に、一切の音がかき消される。 ―――わからないだろう? 始めてその存在を知った日。 エルドラントで、約束だと叫んだその声。 アクゼリュスの崩壊の中、ルークを見失ったとき。 そして、今。 どれだけ心を奪われたか。 どれだけ心をかき乱されたか。 ―――きっと、コイツにだってわからないだろう。 アッシュはそれを悔しいと思った。 同じ顔、同じ体温、同じ鼓動。 もしかしたら、奪われたものを取り返したいだけなのかもしれない。 愛情なんて言葉よりももっと本能的で、幼稚なものなのかもしれない。 元々ひとつだった存在。それが今や、こんなにも遠い。 その全てを自分のものにしたいと、心の奥からこみ上げる欲求。 それは… 「アッシュ?」 耳元で、ルークの戸惑いの声。 遠慮がちに、そっと背中に添えられる手。 「勝手な真似ばっかりしてるんじゃねえ、この馬鹿」 「うん、ごめん…」 言葉を継ごうとして、横から聞こえた密やかな笑いにアッシュは我に返る。 すぐ横では、イオンが微笑んでいた。 思わずアッシュはルークを突き飛ばすように赤面して離れる。 よろめいたルークの、その頬もまた赤かった。 「…帰るぞ」 そう言って再びアルビオールの中へと戻っていくアッシュの耳を、風がまた笑いながら吹き抜けていく。 頬の熱さに、どうしても後ろを振り返ることが出来なかった。 *** |