promised tune




ルークが語った内容に、イオンは目を見開く。
イオンだけでなく、漆黒の翼の三人も同じように絶句していた。
「大地が…それでここのところ、地震が多いって話を聞くんだね」
「イオン、お前はアクゼリュスについての預言を知ってたのか…?」
ユリアの預言には、ルークがアクゼリュスに向かうという内容の後、アクゼリュスが崩壊し戦争が起こることも詠まれていたという。
しかしイオンはやはり首を振った。
「僕は体力の問題を理由に、限られた預言しか詠む機会がありませんでした。もっと力があったなら…ルークたちの役にも立てたのに…」
もし、自分がレプリカでなければ。能力の劣化がなければ…
俯くイオンを見て、ルークはそっとその肩に手を置いた。
「そんな風に考えちゃだめだ、イオン」
ルークが覗き込んだイオンの目は、不安に震えている。
一体この先、自分に何ができるというのか。
「俺さ、思うんだ…人は誰かと同じ存在にはなれないんだって。どんなに憧れても、それがレプリカでも、あるいは双子でも…完全に誰かの代わりになんて、なれない」
だから自分も、本当は本物のルーク・フォン・ファブレ≠ノは…アッシュにはなれない。
「でもその代わり、自分にしか出来ないことがきっとある。他の誰にも変わってもらえないようなことが、きっと…」
「ルーク…」
おい!ルーク!
その時、ルークの脳裏に唐突に響いた声。
懐かしいとすら思える頭痛と耳鳴りに、ルークは思わずしゃがみこんだ。
「っ…アッシュ!アッシュか?どこにいるんだ?」
…れはこっ…のセリフだ!聞こえてるなら…っさと返事しろ、この屑が!
耳鳴りに紛れて、途切れ途切れになる声。ルークは心の中で、強く強く叫び返した。
―――ナム孤島に…!イオンと一緒にいる!
わかった、そのまま待ってろ
「アッシュが何か…?」
イオンがルークの額に滲んだ汗をそっと袖で拭う。
「ああ…たぶん、迎えにくるんだと思う…」
立ち上がったルークは、イオンを見つめて迷った。
この先パッセージリングを訪れようと思えば、ダアト式封咒の封印を解くためにイオンの力が必要になってくる。
でも、それは同時にイオンの命を削ることでもあるのだ。
「イオン…」
言いよどんだルークの姿から何を感じ取ったのか、イオンは優しく微笑んだ。
「ルーク、何か僕にできることはありませんか?」
「!」
「さっきルークが僕に言ってくれたでしょう。他の誰にも変わってもらえないようなことが、きっとあると…。もしそれがどんなに困難なことであっても、僕はそれを探したいんです」
自分の存在する意味を、確認するために。
ルークはぎゅっと唇を噛むと、扉の前でルークたちの会話を静観していたノワールを振り返る。
「なあ、切れ味のいいナイフってあるかな」
「え?ああ、そりゃあるけど…」
ルークの意図がわからずに不審そうな顔をしたノワールは、スッとその短いスカートの下から銀色のナイフを取り出した。
「ちゃんと返しとくれよ」
「うん、すぐ済むからさ」
ルークは自分の髪を掴むと、躊躇なくそれを切り落とす。
「…ルーク!?」
イオンの驚いた声。
記憶の中の自分は、魔界で、ティアのナイフでこうして髪を切った。
それは何か目に見える形で変わりたかったから。
今もまたそうだ。
望むのは、常に弱気な自分との決別。
ルークが振り向くと、イオンはまだ驚きの表情のまま目を瞬いている。
「イオン、お願いがあるんだ…一緒に来てほしい。イオンの力が必要なんだ」
ルークの目に宿っている、これまでよりもずっと強い意思の光。
それを見て、イオンもまた微笑んで、頷く。
「はい、ルーク」
弱気になっている暇はないのだ。
アクゼリュスが崩落してしまった以上、世界は急激にバランスを崩し始めるだろう。
これ以上の被害を出さないために。
大地を、降下させる。





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