promised tune
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「どうする、やるか?」 「いや…やめておく」 ガイが剣を納めると、アッシュもそれに倣った。 緊張の糸が切れたガイは、がっくりとうずくまる。 巻かれた包帯に血が滲んでいた。 アッシュが無言で肩を貸すと、今度はガイも振り払いはしない。 丘の向こうに見えている街を目指し、ガイを支えながらアッシュは歩き出した。 「世界を救うなんて…偽善じゃないのか」 ぽつりと、ガイの声。 「その通りだ」 「なんだ、認めるのかよ…」 あっさりと頷いたアッシュに、ガイは拍子抜けしたような声を出す。 「誰もが幸福な世界などありえないだろう。救ったぶんだけ、必ず救われなかったやつもいる」 「じゃあ…」 なぜ世界のために、などという言葉を使うのか。 「単純なことだ。国を動かすには大義名分がいる」 本当の気持ちは、そんなに大きなものじゃない。 「ただ、ヴァンの、モースの望む未来に俺の望むものはないからな」 そう。ローレライの解放とやらも本当は知ったことではないのだ。 でも、こうしてここに今生きて立っていることで、今まで気づかなかったものを見ている。 それがローレライによって与えられた、その借りを返したいという気持ちも、少しだけある。 「国か…厄介だな」 「まったくだ」 少し歩いただけで、ガイは肩で苦しそうに息をする。 やはりずいぶんと体力を消耗しているようだ。 「なあ…」 かすれた声で、それでもアッシュに問う。 「アイツもそうなのか」 ルークがガイのことを知りながら、何も言い出さなかったのは。 「さあな」 アッシュの返答はやはり素っ気無い。 「あいつが俺のレプリカだからって、考えることまで同じとは限らないだろう」 ただひとつ共通するものがあるとすれば…「その先の未来」をこの目で見たいからというその思い。 異なるのは、ルークはただ自分のみを犠牲にして戦っていたということ。 「ルークの場合はその未来に自分の周りのやつらの幸せまで望むようだがな」 おめでたいヤツだというアッシュの、その皮肉そうな口調の裏に潜む優しさにガイは気づいた。 「お前…表現が不器用なところはルークそっくりだぞ」 その言葉に、アッシュは憮然とした表情になる。 「でもやっぱり、似ていないな」 アッシュとルーク。ガイにはそれぞれに、確かに違う魂が宿っているように思えた。 「俺はルークのほうが好きだが」 「奇遇だな、俺もだ」 間髪いれずに返された言葉に、ガイは一瞬ぽかんとする。 「はははっ…っ…ってー…」 笑った瞬間、傷の痛みにうめく。 震えるように息を吐き出して、ガイはまたぽつりと言った。 「でもお前たちの気持ちが、少しだけわかった気がするぜ」 対峙したのは、自分と同じ顔をした人間。 あれは…自分のレプリカなのだろうか。 しかしルークと違うのは、その瞳に感情が感じられなかったこと。 「でもあれじゃ…ただの人形だ」 感情を感じられない代わりに、恐ろしいほど迷いのない太刀筋。 アッシュが来なければ、あのままとどめを刺されていただろう。 アッシュは何も応えない。 ただゆっくりと、近づいてきた街の影に向かって歩みを進める。 また小さな地震が二人を揺らした。 世界は少しずつ、だが確実に崩壊へと向かっている。 *** |