promised tune




「やっぱり陽の光って大事なんだね…」
アニスがしみじみと呟いた。
「そうですわね…」
目を細めてナタリアが頷く。
アルビオールは今、青い海原に浮かんでいた。
降りそそぐ太陽の光がその翼に眩しく反射する。
ユリアシティの市長であるテオドーロに協力を願い、アッシュたちはセフィロトツリーを活性化させた。
そしてその音素の奔流に押し上げられて到達したのは、ダアトの北東に位置する海だった。
冷たい海流に乗って、小さな流氷が通り過ぎていく。
「アッシュ、タルタロスはシェリダンにあるのですか?」
「そのはずだ」
解体されきっていなければな、と肩をすくめるアッシュの言葉に、ジェイドも同じようなポーズを取ってみせる。
「では…一度シェリダンへ向かいましょう。私たちがやるべきことは多いのですから、足も揃えておかなければ」
ジェイドの提案に一同は頷いた。
「お願いしますよ、ノエル」
「はい!」
アルビオールはその頭を南へ向け、海上を滑るように走り出した。
「さて…この間に、作戦会議といきましょうか」
「作戦、ですか?」
立ち上がったジェイドがみなの顔を見渡す。
「まず今私たちの手元にある情報の整理です。アッシュによると、この後最も恐れるのは大地が次々崩落してしまうことだそうですが…」
ジェイドの視線を受けて、アッシュが口を開いた。
「ヴァンが一人でパッセージリングを破壊する力を持っている以上、必ず他のセフィロトを狙ってくるはずだ。この世界そのもののレプリカを作るためには、膨大な音素が必要だからな…」
「ではそのパッセージリングを守らなくてはなりませんわね」
簡単にそういうナタリアだったが、ティアは深刻そうな表情を崩さない。
「世界のあちこちに点在しているものを、私たちだけで守りきれるのかしら…どんな順番で狙われるのかもわからないのよ」
「全てを守りきる必要はない。…というよりも、無理な話だ。そもそも既に二つのパッセージリングがなくなった以上、外殻大地は常に不安定な状況にある。あと一つ二つなくなるだけで、世界の全てが崩落しかねん」
「そんな…」
「じゃあなおさら、パッセージリングを総長から守らなきゃ行けないんじゃないの…?」
トクナガを抱きかかえたアニスがぎゅっと眉根を寄せる。
ヴァンの強さを、もちろんアニスは直に目にしたことはない。
しかし教団内部での評判は知っており、とても楽に戦える相手ではないということはわかっていた。
手分けをして守れる、というものでもないだろう。
「そこで、私たちは根本に立ち返らねばなりません」
「根本?」
「そもそもこの世界がパッセージリングによって押し上げられている状態を維持することが難しいわけです。それならば、落とされるよりも先に…下ろしてしまいましょう」
ジェイドが人差し指を立てる。そしてそれをスッと下に向けた。
「下ろす?この世界を?それは…崩落とどう違うのですか?」
ナタリアは訝しげな表情。
「破壊するわけではないのです。そうですね?アッシュ」
説明はお願いします、と振られ、アッシュは一瞬鋭い視線をジェイドに向けたが、やがて観念したように話し出した。
「…全てのパッセージリングの力を同時に弱め、大地を徐々に降下させる。それなら多少の被害は出たとしても、崩落よりはるかにマシだ」
どうすればそんなことができるのか。アッシュの記憶を頼りに、パッセージリングを操作する方法が説明される。
全てのパッセージリング同士は繋がっており、共鳴している。
パッセージリングのなかでも最も強い力が集まる、ラジエイトゲートとアブソーブゲートの二つを操作するだけで、大地の降下は可能なはずだ。
「世界を…魔界に下ろしてしまうのですか?」
「そうです。そのためには、マルクトとキムラスカの協力が欠かせません。なにしろ世界が変わるわけですから」
魔界、つい先程まで目の前にあったその世界を誰もが思い浮かべる。
もちろん光が差さないのは外殻大地があるからであり、降下させればあのように暗い姿ではないだろう。
しかしそこに溜まり、澱んでいる瘴気の霧は、大地を降下させたところで消えるとは思えなかった。
何も知らなければ、突然の地震によって辺りが瘴気に包まれた…というような状況にも見えてしまうかもしれない。
「混乱が起きないようにするには、きちんとした説明が必要ですわね」
世界中にいったいどれだけの人々が住んでいることだろう。
一つの混乱はまた次の混乱を招く。そうならないようにするためには、世界中に広くその情報を伝える必要がありそうだった。
「では、予定されていたマルクトとキムラスカの和平が結ばれればいいわけですね?」
「そう…問題はそこです」
「…?」





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