promised tune




***

それは異様な街だった。
天空に―――外殻大地に空いた穴から僅かに注ぐ光を増幅するように、街は輝く薄い膜に覆われている。
その入り口に立ち、アニスはぽかんと口を開けて辺りを眺めた。
「すっごーい…」
好奇心に満ちた声を上げる。
「なるほど、これは確かに…すごいとしか言いようがありませんねぇ」
ジェイドも腕を組んで感心している。
街の外は目に見えるほど濃い瘴気で覆われているのに、一歩中に入るとそれを全く感じさせない。
恐らくは譜業による技術だろうと思われるのだが、どうすれば町全体を覆うほど大きく強大な力を生み出せるのか想像もつかなかった。
「実際この街に住んでいる人々も、ここがどのように造られ、機能しているのかほとんど知りません」
ティアが苦笑する。
「ここは名前どおり、ユリアの街…ユリアの遺産なんです」
「わたくしは魔界の存在はもとより、この街が存在することも知りませんでしたわ…。ティア、あなたは…ここで育ったのですか?」
「そうよ。私はここで育ち…ルークと出会う直前まで、ここに住んでいたの」
ナタリアの問いに、ティアは僅かに遠い目をする。そう、ヴァンを追ってバチカルの屋敷へ行く前まで確かにここにいた。
しかしそれはもはや、遥か遠い日の事のように思えてしまう。
「行きましょう。奥に私の家があるわ…まずは休みましょう」
ティアの声に促されるように、一行は町の中心へと続く長い道を歩き始めた。
足元を飛び跳ねるようにして着いて来ていたミュウをひょいと持ち上げて、ジェイドが話しかける。
「ミュウ、ちょっといいですか?」
「みゅ…?」
目をパチパチと瞬くと、ミュウは頷く。
「チーグル族は…ユリアがローレライとの契約を結ぶ際に、手を貸したといわれていますね」
「はいですの!」
「それは具体的にどんな方法だったのですか?」
歩きながらジェイドが聞いたのはミュウにとってはかなり難しい話で、思わず頭を抱える。
「みゅうぅぅ…えっと、チーグルは昔もっと数が少なくて、その代わり話す事ができたって聞いたことがあるですの」
「まあ、では昔はそのリングがなくてもチーグルと会話ができたのですね」
横を歩いていたナタリアが目を丸くする。
「そうですの!思い出しましたの!でもユリア様にその力をあげて、かわりにこのソーサラーリングをもらったですの!」
「その力…つまり、言葉を話す、ということですか?」
「はいですの!だから今はこれがないと皆さんとお話できませんの。でも僕たちは大事にしてもらって、いっぱい増えたですの!」
「でも、わたくしたちは今こうやって話す事ができていますわ。更に言葉を、とはどういうことなのでしょう…」
「ユリアが言葉を持たなかった、ということでしょうか。まあこれは憶測に過ぎませんし、もっと別のことを抽象的に表したものなのかもしれませんからね」
「ええ…」
「みゅぅ…難しいお話ですの…」





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