promised tune




「何故です?大佐」
「それがユリアの預言に詠まれたことだったからです。ルークはアクゼリュスに向かわなければならなかった」
「そんな…」
「あの時、私がバチカルで詠んだ譜石ね…確かにあれは、ユリアの預言だった」
「それに、ルークならもしアッシュがアクゼリュスの住民を避難させたと言っても、行っただろうと思いますよ。彼にとって相当思い入れの強い場所だったようですから…」
そして、恐れていた通りに崩落は起こってしまった。
「まあ、アッシュがそこまで予想していたかどうかは知りませんが」
ちらりと向けられた視線に、アッシュは首を振る。
まさか、ヴァンが超振動を自らの意思で起こせるほどの力を手に入れているとは思わなかった。
そして崩落自体を止められるかどうかがこの世界を自分たちの知るものと変えられる第一歩だと、ルークもアッシュも考えていたのだ。
それでも万が一アクゼリュスが崩落してしまったとしたら…そう考えた末の、アッシュの選択だった。
「こうしておけば、あいつが必要以上に気に病む必要もない」
「アッシュは、本当にルークのことが大切なのね」
ティアの呟きに驚いた顔をしたのは当のアッシュである。
「そういうわけじゃない。うじうじと落ち込まれて時間を無駄にしたくなかっただけだ」
「それでも素晴らしいですわ、アッシュ!あなたは本当に民のことを考えて動いてくださっているのですね!」
「でも…助け出された人たちは、どこへ?」
近くに居たのでは、やはりこの崩落に巻き込まれてしまっているのではないだろうか。
「それでは救い出す意味がないでしょう。そこはちゃんと考えていますよ。ねえ、アッシュ」
見透かしたようなジェイドの笑みに、アッシュは不機嫌そうに息をついた。
『これ以上離れた地点に、崩落の痕跡は確認できません。もう一度戻りますか?』
ノエルの声に、一行はハッと顔をあげる。
見つめ続けていた窓の外の景色に、他の生命を見つけることは出来なかった。
それでもアッシュのもたらした事実に、ナタリアは幾分肩の荷の下りた顔で頷く。
「ありがとうございます。もう結構ですわ…ユリアシティへ向かいましょう」
『了解!皆様もこちらに椅子がありますのでおいで下さい』
「…だそうだ。行くぞ」
まだ仏頂面のままのアッシュがスタスタと奥へ入っていく。
操縦席の後部にある乗務員室に入り、各々は着席するとしっかりとベルトを締めた。
「それではアルビオール、発進します!」
離陸に備え身構える一同だったが、どういうわけかいつまで経ってもその気配がない。
「…飛ばないのですか?」
首を傾げるジェイドに、ノエルはぽりぽりと後頭部をかきながら答える。
「はい。…正確には、飛べないんです」
「ええー?」
「揚力の制御で魔界までの降下は出来たのですが、自力で上昇するだけの力はまだないんです。飛行譜石があればいいんですけど…」
「手配はしておいたつもりだったがな…そこまでは間に合わなかったか」
「まさかこのまま沈んでしまったりは…しませんわよね?」
海を渡るように滑らかに進んでいくアルビオールだが、粘度の高い泥の海ではいつかその翼も絡め取られてしまうのではないだろうか。
ナタリアの不安げな声に、ノエルは明るく答える。
「あ、いえ、その点はご心配なく。タルタロスから浮標を移設していますので、この泥の上もこのまま進むことが可能です」
「でもぉ…元の、外へ戻るには上に行かないといけないんでしょ?」
「セフィロトを使えばいい」
アッシュが平然と答える。
「なるほど、セフィロトツリーに乗って上がるのですか…しかしこのアルビオールの強度は?」
「問題ありません。あらかじめそれを考慮して設計されたものですから」
「ふむ、さすがの根回しという感じですね、アッシュ」
「それは褒めているのか?」
「もちろんですよ」
沈黙を恐れるかのように、会話は続く。
やがて水平線に、これまで見たことも無い形の建物が姿を表した。
暗い魔界の中に、淡い光を放つ都市。
振り返ったノエルに、ティアが頷く。
「あれが…ユリアシティです」





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