promised tune



ジェイドは深く溜息をついて顔を上げた。
「…それを全て信じろ、というのですか…」
眼鏡を外し、眉間を押さえる。ミュウが膝の上からルークを見上げて、首をかしげた。ずいぶんと眠そうな眼をしている。
「みゅうぅ…難しいお話ですの…」
話の途中から椅子に座って聞いていたアニスも、身体をほぐすように腕を伸ばす。
「総長が世界を壊す、なんて急に言われても…困っちゃいますよぉ。レプリカの世界とか…」
「…そう、ね……少なくともモース様は、平和を望んでおられるはずだわ」
「…ティアさん、大詠師派なんですね…」
アニスが不満げに呟く。ティアは、慌てて首を振った。
「そ、そうじゃないわ、私は中立よ。」
「俺だって…まだ戸惑ってる」
預言に読まれた戦争と、その先にある反映を信じたモースの行動。そして、預言に縛られたこの世界そのものを壊そうとするヴァンのこと。さらには外郭大地の崩壊まで。かいつまんでの話ではあったが、それはジェイドたちを驚かせるのには十分だった。
(でも…)
何度か迷いながら、口に出すことの出来なかったこともある。
自分が、アッシュのレプリカであること。
(俺がレプリカだと、言い出すのが怖かったんじゃない…)
言い訳のように、ルークは胸中で呟いた。
ただ、レプリカだからオリジナルだからと、存在の意味にこだわりたくはなかったのだ。
(俺は俺、だから…)
もう、本物だ偽者だと言い始める気はない。
自分自身に向き合うと決めたこと。アッシュが…認めてくれたこと。
この気持ちだけは、時が戻ろうとも失いたくはなかったから。
「だけど、俺にとって皆が大切な存在なのは、確かだから…言っておきたかったんだ」
「そぉんなぁ、大切だなんてアニスちゃん照れちゃいます〜♪」
白々しいほど明るく答えながら、アニスが身をくねらせた。
何も言わずに目を閉じているイオンを横目で見て、ジェイドが空気を換えるようにぽんと手を打った。
「少し頭の中を整理したほうが良さそうですね。」
部屋の外に控えていた兵士に何事かを告げる。そしてジェイドの言葉と共に、鍵の開く音がした。
「これからあなた方を解放します。軍事機密に関わる場所以外は全て立ち入りを許可しましょう」
「え…?」
「あなたの話を理解するには、しばらく時間が必要のようです。」
ジェイドが扉を開く。風が部屋の中へと吹き込んできた。
振り返って見せた笑みには、珍しく困惑の色が浮かんでいた。
「確かめてください、ルーク。本当にここが、あなたの既に知っている¥齒鰍ネのかを」




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