promised tune


「そこの二人を捕らえなさい。正体不明の第七音素を放出していたのは、彼らです」
森を抜けると、待機していたマルクト兵たちにジェイドは告げた。
「ジェイド!二人に乱暴なことは…」
まさか拘束するとは思っていなかったのか、イオンが驚きの声を上げる。
「ご安心ください、イオン様。何も殺そうというわけではありませんから」
ジェイドの視線の先にはルークたちと、ライガ・クイーンの姿があった。
「た、大佐ぁ…大丈夫なんですかぁ?」
まさかライガが一緒だとは知らなかったのであろう。アニスはイオンを守るようにぴったりと傍につきながら、小さな声でジェイドに問う。
「仕方ありません。できれば、キムラスカの領地にでも下ろしたいところですが…」
ルークになついているようですし、大丈夫でしょう、と冗談とも本気ともつかない口調でジェイドは肩をすくめた。

「さて…あなた方を捕らえた理由は先程述べたとおりです。国境を不正に越えてきた罪、ですね。」

タルタロスの一室で、ジェイドはルークたちに椅子を勧めるとそう言った。
「まずは自己紹介とまいりましょうか。ルーク、あなたのフルネームを教えてください」
「…ルーク・フォン・ファブレ」
「!!」
ルークがキムラスカの王家に連なる身分だと知って、アニスもジェイドも、イオンでさえも驚いた顔をする。
「キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵のご子息…というわけですか」
その横でアニスは「素敵ぃ〜」と両手を組み合わせていたが、やがて首をかしげた。
「でもぉ、公爵家のご子息であるルーク様が、どうしてライガなんか連れてるんですかぁ?」
「その話もありましたね。チーグルの長老も言っていましたが…」
案内役であったミュウを送り届け、ライガがこの森を離れると報告するために一行はチーグルの住む大木へと向かった。
もちろん、チーグルを食物とするライガは大木から少し離れたところで待っている。
しかしその存在だけは感じ取れるのか、穴の中にはやや緊張した雰囲気がただよっていた。
たくさんのチーグルたちの奥から、浮き輪を付けたようにソーサラーリングを腰に嵌めているチーグルの長老が、ゆっくりと進みでる。
「話はミュウから聞いた。二千年を経てなお約束を果たしてくれたこと、感謝している…」
「いえ、チーグルに助力することはユリアの遺言ですから…当然です」
イオンが答えると、長老はふわふわと首を振る。
事の元凶であるミュウを一族から追放し、季節が一巡りする間ルークに仕えさせる、と。
「わかった…よろしく頼む、ミュウ」
「みゅう!みゅうみゅう!」
ソーサラーリングを長老に返したミュウの言葉はただの鳴き声にしか聞こえなかったが、その表情から喜んでいることがわかる。長老はルークを見上げると、満足げに溜息をついた。
「ルーク殿は…我がチーグル族とも由縁の深い方とお見受けする。どうかよろしくお願いいたします」
「え?俺が…?」
「うむ。その純粋な第七音素こそ、その証」
「そういえば…ルーク、あなたさっき目の色が…」
ティアが覗きこんだが、今は両目とも元の翡翠色に戻っている。
「私の気のせい…ではないわよね」
「あれは…俺にも良くわからないんだけど…」
首をかしげたルークの元に、リングを受け取ったミュウが歩み寄る。
「ご主人様、よろしくですの!」
「ライガをあまり長くここに留める訳には行きません。行きましょう」
イオンの一言で、一行は森を後にしたのだった。

「純粋な第七音素、ですか…」

ジェイドが呟く。
「どうやら、話していただかなくてはならないことが沢山あるようですね」
拘束という名目のためか、硬く鍵をかけられたドアの向こうで、動力源の低い振動音が響く。
「長くなるけど…いいかな?」
ルークは椅子に座ったまま、背筋を伸ばしてジェイドを見た。
「多少なら構いませんが…私たちも旅行をしているわけではありませんので」
「うん、キムラスカとマルクトの平和条約のためだろ?」
「!!…何故、そう思うのです?」
「…全部話すよ。俺にも、よくわかってないけど…」
言葉を探すようにしばし下を向いたルークは、やがて意を決したように口を開いた。

「俺は…過去にいるんだ」

「過去?」
「今俺の周りで起こってることは、本当はもうとっくの前に起こったことで…終わったことのはずなんだ」
目を閉じる。初めて屋敷を出てから、ローレライの解放まで…一つを思い出せばまた一つ、と止め処なく思い浮かんでくる。
ルークにとっては昔話のような、世界を救うための旅の物語が始まった。




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