promised tune



「…これは?セフィロトツリー?」

ユリアは記憶の道≠ニ呼んでいた。星の記憶の示す道標なのだと

「記憶の…?」

私はこの記憶の道≠ユリアに示した。彼女はそれを元に予言を読んだ
自らの望む未来へと繋がる道を選び、その記憶を予言として残したのだ

――――人類に未曾有の繁栄を――――

しかし…世界は彼女の思う通りには動かなかった。元は彼らに乞われ、彼らの為に示した道だというのに
どれだけ明らかな導をもってしてもその道を逸れてしまう。そのたびに彼女は新たな予言で彼女の望んだ道へと未来を引き戻そうとした
道に迷い続ける人類の未来を彼女は憂い、嘆き、そして…私に願ったのだ

歩いていて、道を間違えたのだと気付いたとき人はどうするのでしょう。
闇雲に歩き回り、正しい道を探す者も居るでしょう。しかし多くは来た道を戻り、正しい道を選びなおすことでしょう。
どうかこの世界が、正しき道へとたどり着きますように…

私はユリアに抗う術を持たなかった
第七音素は記憶と時間を司る
そして世界は繰り返し始めた…人類に滅びに近づくたびに、ユリアとの契約により時を遡る。そして、また新しい道へ
未曾有の繁栄――――人類の終わりがすなわち星の終わりとなるまで、彼女は繰り返し続けるつもりだったのだ

元々それほど多くは無かった分岐が、無数の枝葉を伸ばすように増えていく。
生まれ、そして終焉を迎えるまでの道のりはこうして限りなく分岐していく。

私の力だけではこの繰り返しから逃れることは出来ない
ユリアとの契約の限り果てしなく、ただ時を彷徨うのみ…
聖なる焔の光(ルーク)、そして聖なる焔の礎(アッシュ)よ
今お前が生きているのは、この枝の一つ。お前達がそれまで存在した、私の半身を栄光を掴む者(ヴァンデスデルカ)より解放してくれた世界とはまた異なる道の上
お前達の時を引き戻したのは、その中で僅かに私が出来る抵抗に過ぎなかった。
…感謝している。

「これから世界はどうなるんだ?」

私が一つに戻った以上、これ以上の不要な枝分かれは起きないだろう
だが導無き世界で人類がどれだけの繁栄を遂げるのか、私にはわからない
この一つの枝の長さもまた、星の上に生きるものたちに託されたのだから

「複数の枝…ということは世界は同時にいくつも存在していることになるのか?」

そうだな。無数の同位体が存在するとでも思えばいい
時間の壁に遮られている為滅多なことで交じり合うことは無いが、融合した事例が無かったわけではない
そもそも星の最後には枝分かれした世界同士が大爆発(ビッグバン)を起こし、一つになるのだから

「ローレライは?」

音素体の最も外側でお前達を見守ろう
そして星の終わりの日、私は最後の光となって空の彼方へと旅立つだろう

さてここで、お前達は選択せねばならない

「?」

この無数の枝分かれの上。私がお前達の為に力を貸せるのはこれが最後となろう。せめてもの解放の礼だ
どの世界に戻るかは、お前達の選んだとおりにしよう

「元の世界…」

顔を見合わせる。

「戻ったとして、俺はどうなる。あちらの世界では既に死んだ身ではないのか?」

この世界と元の世界でお前達の存在は融合し、一つになっている
どちらかにしか存在できない反面、どちらにも存在することが出来る
ただし、こちらの世界で進んだ時間を戻すことは出来ない
元の世界に戻ることを選んでも、それなりの年月が経っているだろう

「帰ろう、アッシュ」
「ふん…お前はそれでいいのか」
どちらにしろ、未来は未知。
出会いが、別れが、無駄だとは思えなかったから。
どんなに辛くとも、それは未来を見るために、逃げてはいけないこと。
「それに…約束したもんな」

――――必ず帰るって。

どちらからともなく手を繋ぐ。

さらばだ、運命の焔たちよ―――――――

降り注ぐ光に包まれて、ルークとアッシュは目を閉じた。






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