promised tune
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*** 耳に届いたのは虫の声。 夜風が花の匂いを運んでくる。 「ここは…」 「タタル渓谷、か」 白い花が一面に咲き誇り、風に揺れている。その白さに月光が反射して、お互いの表情が確認できる程度に明るい。 「本当にもとの世界、か?」 実感がなさそうなアッシュに、ルークが笑う。 「みんなに会ってみればわかるって。あれから少し時間が経ってしまってるって、ローレライは言ってたけど…」 月明かりのほうへ数歩踏み出し、ルークはくるりと振り返る。 「おかえり、アッシュ」 その目に滲む涙が、月明かりに反射してキラキラと輝く。 「泣きたいのはこっちの方だ」 アッシュは大股にルークに近寄ると、その腕を引き寄せ、強く抱き締めた。 「アッシュ…?」 「近づくと面倒だと、思ってたんだがな…」 「え?」 耳元で呟かれる。 「やっぱりそうだった。危なっかしすぎて…だが、それを放っておくほうがよほど面倒なことになりそうだ」 「そんなにひどいかなぁ、俺…」 しゅん、と肩を落とすルークを、離さないまま。 その長くなった髪を指先でかき上げる。 「…邪魔だな」 瞳を覗き込まれる。 「…?また切るよ」 「…意味が違うが、まあいい」 そっと重ねられる唇。 ルークが硬直している間に、何事もなかったかのようにアッシュは歩き始める。 「遅いぞ、ルーク」 「え?アッシュ?今のって…その…何の約束?」 「………気が向いたらそのうち教えてやる」 なぜか不機嫌に呟いて早足になるアッシュの後を、慌てて追いかける。 満月の照らす渓谷に、突風に散らされた花びらが舞い上がる。 その風に乗って届いたのは、懐かしい歌声。 「行こう!」 約束の旋律が聞こえる。 月明かりに輝く白い花。その先に―――――― ■ END ■ |