promised tune
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*** アリエッタはぬいぐるみをぎゅっと抱きしめなおした。 その小さな指先に、譜術の灯りがともる。 「ネガティブゲイト…」 まだ幼さの抜け切らない声が、ルークの周りに闇の空間を発生させる。 「くっ…またこれかよ!」 アリエッタはシンクとリグレットを補助するように譜術を使う。 他に気を取られていると、いつの間にか呼び寄せられた闇に手痛いダメージを受けてしまう。 詠唱が終わる前に攻撃するしかない。 「がはっ!」 避けたはずの爪先。しかしそこから強烈な衝撃波が放たれ、アッシュを襲う。 「これは…ダアト式譜術か!」 わき腹を掠めた一撃は防具越しでもなお倒れこむほどのダメージをアッシュに与える。 ローレライ教団の導師に受け継がれるとされる、体術と譜術を融合させた技。レプリカが扱う場合は数段劣化するというが、それでも恐ろしい威力である。 もう長い間戦い続けている。ふと足元がもつれよろめいたルークに向けて、アリエッタが何かを詠唱し始める。 「危ないですの!」 それを見たミュウは、ルークを庇おうと飛びつくようにアリエッタへ向かっていく。 「…!」 人間ではなかったからだろうか。 そのミュウに向かって譜術を発動させることを、一瞬ためらうアリエッタ。 生まれた隙に、アッシュが剣を振るう。 「……!…う…」 「アリエッタ!」 崩れ落ちるアリエッタの向こう側から、シンクの声が冷たく響く。 「グラビティ!」 足元に広がる譜陣。 押しつぶされそうな重力がルークとアッシュを襲う。 何かが体中を押さえつけているようで、息をすることも困難なほど。 「ルー、ク…!」 「…!」 ちらりと目を合わせ、ルークは頷いた。 次の瞬間、二人の間から沸き起こった第二超振動に全ての音素が無力化され、重力を作り出していた空間はあっさりと霧散する。 「なにっ!?」 勢いのままアッシュの振るった剣がシンクの足を捉え、バランスを崩したシンクはその場に倒れこむ。 「うおぉぉぉ!!!」 叫びとともに、ルークは剣を振り下ろす。 「っ…ごめんな…!」 血に濡れた剣を抜く、ルークの声が震える。 その頬を伝う、一筋の涙。 「……その優しさは不要だ。泣いている暇などあるのか?レプリカルーク」 ルークたちの連続攻撃に、流石のリグレットも息が上がっている。 「うおぉぉ…!レイディアント・ハウル!!」 「ぐぅっ…!」 怒りと悲しみを込めたルークの渾身の一撃が、リグレットの右腕に直撃する。 衝撃で吹き飛ばされながらも、なおリグレットはルークに向けて引き金を引いていた。 鈍い爆発音。 「ッ…!?」 銃は既に壊れかけていたのだろう、込められた力に耐え切れず、リグレットの手の中で暴発する。 それでも放たれた最後の音素の塊がひとつ、ルークを貫く。 「うぁっ!!」 「ご主人様!」 「ルーク!」 ルークとリグレット、二人が同時に倒れこむ。 アッシュが顔色を変えてルークに駆け寄った。 ルークは荒い息をつきながら、周囲を見渡す。 「く…リグレット、は?」 「…!いないですの!」 「なんだと?」 少し離れて倒れたはずのリグレットは、ルークに注意を向けた一瞬の間に消えていた。 「う…」 右肩を押さえ倒れこむ。その指の間から溢れだす鮮血が、ルークの白い服を染める。 「ご主人様ぁぁぁ!駄目ですの!死んじゃだめですのー!!」 「これくらいで死んでたまるか!おいルーク、止血してやる。手をどけろ」 アッシュが引き裂いた布をきつく巻きつける。 「どこに…行ったんだ?」 「さあな。無事じゃいないはずだが…」 ふらふらと立ち上がり、ルークはリグレットが倒れていた場所を確認する。 「みゅうぅ…こっちにも血がいっぱい、ですの…」 ミュウが不安げにルークに触れる。 そこにはおびただしい血をこぼしながらも、遠ざかるリグレットの赤い足跡が続いていた。 これを辿れば追いかけることができる。 「他のレプリカが作られる前にリグレットを止めなくちゃいけない。行こう、アッシュ」 「ご主人様、顔色がよくないですの…少し休んだほうが良いですの」 「ありがとな、ミュウ。でもそうも言ってられないんだよな…」 ルークは苦しげに、少し寂しそうに右腕を見る。 鼓動にあわせるように明滅する指先。 力を使うたびに、音素乖離が進んでいるような気がする。 「アッシュ…?」 動く気配の無いアッシュに、ルークが訝しげに振り返る。 その目の前に閃く白刃。 咄嗟に転がるように避けると、たった今自分の身体があった場所を剣が薙いで行った。 「……!!」 *** |