promised tune





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「私はこのままここでお待ちしていますね」
「ありがとう、ノエル!」
バチカルの街の傍に降りたアルビオールから、勢い良くルークは走り出す。
まだ間に合うだろうか。
プラネットストームの停止について話し合われているであろう、キムラスカ・マルクト・ユリアシティの会議。
世界中の譜業機関に影響を及ぼすため、キムラスカは停止に消極的だという。
アッシュがエルドラントに捕らわれていることを告げ、少しでも早く停止できるようにしたい。
できるなら、今すぐに。
はやる気持ちを抑え、ルークは城へと続く昇降機へ向かう。
「……?」
スイッチを入れ、ゆっくりと上っていく金属の籠。
その隙間から見える街の大通りを、たくさんの兵士が走っていく。
それを何事かと眺める周囲の店の人々。
会議のための警備にしてはものものしすぎるその人数に、ルークは首をかしげた。
「何があったんだ…?」
バチカル上の入り口で、ルークの顔を知る門番達が敬礼をする。
ゆっくりと開けられたその門の先には、ちょうど外へと出ようとしていたティアたちの姿があった。
「ティア!ガイ!ジェイド…と、ピオニー陛下!?」
「ルーク!どうしたの?ベルケンドへ行ったんじゃ…」
驚いたのはティアたちも同じようで、駆け寄ったルークを囲むように迎える。
「ルークがいるということは、アルビオール2号も来ているのですね?ふむ…」
ジェイドが顎に手を当てて頷いた。
「二手に分かれましょう。ティア、あなたはルークとともにアルビオール2号でダアトに向かってください」
「わかりました」
「何かあったのか?ナタリアは?」
「マルクトから、ルグニカ平野に現れた謎の軍隊から攻撃を受けていると報告があったの」
「え…?」
ルークが絶句する。
(今マルクトには、イオンとアニスが…)
ベルケンドに行く前に、アニスをグランコクマへと送ったばかりだ。
その表情から考えていることを読み取ったかのように、ティアが頷く。
「グランコクマにはイオン様もいらっしゃるのよね。アニスがついている限り大丈夫だと思うけど…」
「街の中に被害が出たという報告は受けていません。恐らくは、大丈夫でしょう」
ジェイドが溜息をついた。
「そんなわけで、ピオニー陛下と私はグランコクマへ至急戻らねばなりません」
「ナタリアはキムラスカ軍の指揮を執るって言って残ってる。まあ、国王は行かせたくないみたいだったがな」
その光景を思い出し、ガイが苦笑する。
「ルーク、今回の件は…あなたが前に教えてくれたレプリカ軍の可能性が高いとふんでいます。しかしモースならばキムラスカの軍隊に見せかけてマルクトを襲うでしょうが、どうやらそうではないらしい」
「モースじゃない…」
「大佐、ダアトから離反した一部の保守派が噛んでいる可能性もあるのではないでしょうか」
ティアの言葉にジェイドが頷く。
「そうですね。しかし純粋にマルクトを滅ぼそうというのであれば、今回の軍は規模が小さすぎる。正面からやり合えばまず間違いなくマルクトが勝利します」
ここで議論をしていても始まりませんね、とジェイドは苦笑した。
「こんな時に…」
唇を噛みしめるルークの肩に、ガイが両手をかける。
「お前こそどうしたんだ?何かあったんだな?」
「うん。アッシュが…」
ルークの話を聞いたガイは、ティアを見る。
「ティア、俺はルークと一緒に行きたいと思う」
「そうね。本来なら私たち皆で行くべきなんでしょうけど…」
「よし、わかった」
踵を返した皇帝に、ジェイドが訝しげに問いかける。
「陛下?どちらへ?」
「決まっているだろう。戻ってプラネットストームの停止の同意書にサインをしてくるんだ」
ルークが顔を上げる。
「でもそれじゃ…グランコクマに戻るのが遅れるんじゃ…」
「分かりました。根底にレプリカ計画があるのであれば、今ここで一時的にグランコクマを守ったとしても同じ事が繰り返される可能性が高い。元から絶てるのならば、それに越したことはありません」
「俺が数日留守にしただけで潰れるほどグランコクマはやわな街じゃない。それにお前達がアルビオールを貸してくれるおかげで、海路よりもはるかに早くグランコクマに戻ることができるからな」
これくらいの礼をしてもバチは当たらん、とピオニーは笑う。
「…そうと決まれば、急ぎましょう」
「あの…ありがとう!…ございます、ピオニー陛下」
「気をつけてください。目的のわからない敵ほど厄介なものはない」
「そうだな。アブソーブゲートやラジエイトゲートには漆黒の翼もついてきてもらうか」
「ガイ…」
「それでもまだ心配ね…でも私はダアトへ、残っている神託の盾(オラクル)兵を各地の守りに回せないか交渉しに行かなくてはならないの」
ティアが眉根を寄せる。
「大丈夫だって、無茶はしないさ。なあルーク?」
「あ、ああ」
「ミュウもいますの!」
こくこくと頷くルークに、ティアの口元がふと笑みを形作る。
「そうね。ルークならきっと、大丈夫ね」
そしてきりっと表情を改め、前を見る。
「私は私の役割を果たすわ」
今は、それぞれに必要な場所へ。





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