promised tune




「失礼いたします!!ピオニー様にマルクトより緊急の伝令が到着しております!」
バチカル城の会議室の前に駆け込んできた兵士は、息を切らしながらそう告げる。
分厚い扉の向こうでは、各国の王が世界の行く末を決める重要な話し合いの最中である。
会議室には入らず扉の前に控えていたジェイドが、一歩前に出た。
「カーティス大佐…いかがいたしますか?」
「私が聞きましょう」
「はっ、こちらです!」



***



ドンドン、と強く扉がノックされる。
「失礼します」
そして返事も待たずに扉を開けたジェイドに、ピオニー、インゴベルト、テオドーロの三人が揃って訝しげな視線を投げかけた。
「ジェイド…?」
「カーティス大佐、会議はまだ終わっておらぬぞ」
「ふむ、何事ですかな…」
その三人を見渡し、ジェイドは低い声で告げる。
「マルクトより、西ルグニカ平野に所属不明の軍隊が現われたという連絡が入りました」
「何っ!?」
感情を殺すように淡々と続けるジェイドの声が、会議室に響き渡る。
「軍隊…?」
「どういうことですの?」
「まさか…ルークが言っていた…でもあれはモースがやったことじゃなかったのか」
会議室の入り口でジェイドと同じように控えていたガイたちにも驚きが走る。
「グランコクマは陸側の入り口を封鎖、一時障壁を展開。街の外ではありますが一部砲撃を受けたと言う情報もあり、最大レベルの警戒態勢に入っています」
「…被害は?」
一瞬腰を浮かしかけたが、さすが帝国を統べる王である。ピオニーはすぐに落ち着きを取り戻し、強い視線をジェイドに向ける。
「現在は報告されていません」
「なんと…しかしこんな時に、何者であろうか」
インゴベルトが大きく息をつく。
「恐らくヴァン謡将率いるレプリカ計画の残党と、作製されたレプリカの軍勢でしょう。どれほどの火力をもっているかはまだ不確定ですが…」
ジェイドの言葉が発せられるたびに、緊張感が高まっていく。
「将軍を呼べ!我が国の領地に同様の話が出ていないか、至急確認させるのだ」
「はっ」
インゴベルトの言葉に、兵士の一人が走っていく。
「布陣はグランコクマに近く、マルクト軍は陸艦を含む現在の全戦力で臨んでいます」
「分かった。…インゴベルト殿、テオドーロ卿」
ピオニーの呼びかけに二人が頷く。
「うむ。先程の合意をもって、このたびの会議を閉会とする。残る議題は持ち越しとなるが…それで良いな、お二方」
立ち上がったピオニーに、ジェイドが声を掛けた。
「ピオニー陛下、緊急事態につきアルビオールを借り受けました」
「よし、グランコクマへ戻るぞ、ジェイド」
「承知しました」
ぎゅっと拳を握る。
国を侵す敵に対しての怒りが、その瞳の中に燃え上がっていた。
「ピオニー殿」
インゴベルトの呼びかけに振り返る。
「我がキムラスカ軍、必要とあらば南よりルグニカ平野より進軍させるが」
一瞬、ピオニーの瞳が驚きに見開かれた。
これまで何度となく刃を向け合っていた国同士が、一つの敵に向かい力を合わせる。
その場にいた誰もが、世界が変わったと実感した瞬間だった。
「戦況を確認しなければ返答は出来ませんが…戻り次第、書を出します」
そう返すピオニーの口元が僅かに綻ぶ。
インゴベルトが深く頷いたのを合図に、散会となった。






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