promised tune






真っ白な世界に、ガタガタと震える男が一人。
街からすぐ外の雪野原に、自分の身体を抱えるようにして立っている彼の唇の色は見事な紫色に染まっている。
どれほど長い間そうしていたのだろう。すぐ横に置いた袋には、うっすらと雪が積もっていた。
「おや、武者震いですか?」
後ろから掛けられた声に、彼――――ディストはギシギシと音が鳴りそうなぎこちなさで振り向いた。
「いやぁ、スパが気持ちよくてつい長居をしてしまいました」
対照的に、湯気が立つほどの血色のよさで佇んでいるのは、もちろんジェイドである。
防寒具の上に、小さめのリュックサックを背負っていた。
「ささささ寒っ…寒いんででですよっ!わ…わわ私をここ殺す気ですかかかかっ!?」
震えながら何とか言葉を絞り出すが、歯の根がかみ合わずうまくしゃべる事ができない。
「うん?おやまあ…寒かったのですか。もとから紫色の口紅を塗っていたような記憶があったので気付きませんでした」
ジェイドがまったく悪びれもなく言う。
「まあ、あなたがこれぐらいで死んでくれるような人間なら私も苦労しないんですけどねぇ」
なにしろ崖から蹴落として雪崩に巻き込ませた上にスプラッシュで辺り一面凍らせたのに生きてましたからね…と続けるジェイドに、ディストは握った拳をふるわせた。
しかしそれが怒りなのか寒さなのか、もう当人にもわからない。
「あなたって人は…あれは事故だと、ずっと信じてましたよ!」
「はっはっは、若気の至りってやつですね」
「むむムっ…ムッキィ―――ッ!も、もういいから、い…行きますよっ!」
「はいはい」
それはケテルブルクの街の裏側にあたる。
街を背にすれば、遠くに黒々とした森が見える以外は、一面白銀の世界。
「相変わらず…道らしい道もないですね」
二人がしばらく歩き続けると、やがて森の先に入り口をほぼ雪に塞がれた洞窟が姿を現す。
「いつ来てもあまりいい気分ではありませんよ…」
ディストがぼそりと呟く。
「そうですね…」
ジェイドも複雑な表情を浮かべていた。
ここが、ケテルブルクの墓地である。
一年のほぼすべてを雪に覆われた街では、死者を埋葬するにもまず雪を掘らねばならない。
そのため街の墓地は、地面が雪に覆われることのないこの洞窟の中に設けられていた。
「ここで立ち止まっているとまた冷え切ってしまいます。行きましょうか」
洞内には死者を弔う香の煙が薄く漂っている。
天井のつららから滴り落ちる水滴が、あちこちに氷の池を作っていた。
並ぶ墓石を縫うように、二人は無言で足を進める。
「ああ…ここでしたね」
やがて一つの墓の前で足をとめた。
「ネビリム先生…」
ディストが小さな声で呟いた。
その墓石には、彼らの恩師の名が刻まれている。








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