promised tune
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「…?」 「目が覚めたかい。」 ゆっくり目を開けると、緑色の髪の少年が覗き込んでいた。 白いカーテン越しに差し込む日差しが眩しい。 「お前は…」 夢の名残。フラッシュバックする光景。 思わず息を呑む。自分は今、こんな所にいるはずはないと。 そしてそれは目の前にいる少年も同じはずだった。 地核に落ちてもなお、生きていたというのだろうか。 「ここは…ここはどこだ?」 口にしてから気づいたのは、豪奢な天井、薬品に混ざる儀式用の香の匂い。 アッシュには見覚えがあった。 (ダアトか…) 一般兵は使用できない、神託の盾騎士団本部の最奥にある医務室だろうと推測した。 「俺は…何故ここにいる?」 「勘弁してよ、ここはどこ俺は誰、なんて。それが超震動ってやつの副作用なわけ?」 少年が口元を歪める。その顔の上半分は仮面に覆われているが、どうやら面白がっている様子であることはわかる。 「答えろ、シンク」 「はいはい。まあ…ざっと三日程前かな、血まみれのアンタが運び込まれたのは。マルクトからここまでよく持ったって、医者が驚いてたよ」 (マルクトだと…いや、それよりこれは…?) 「…っ!?」 ベッドから起き上がろうとしたアッシュは、体中を襲う痛みに思わず呻いた。 少し身体を動かすだけで、関節が千切れそうな気がする。 「アンタらしくないヘマをしたようだね。鮮血のアッシュ=v 自分の血で真っ赤になるなんてさ。そう言うとシンクは肩をすくめた。 「チッ…」 (…どういうことだ?) この状況にも、覚えがあった。 アッシュがまだ神託の盾騎士団で、ヴァンの下で動いていた時のこと。 マルクト帝国のある貴族が神託の盾騎士団幹部を買収しているという情報を確認し、真実であれば捕えるという任務に就いていたアッシュだったが、逆にキムラスカ側のスパイと思われて束縛、監禁されてしまった。 燃えるような赤い髪の色は確かにキムラスカ王家の血筋に見られる色で、事実アッシュは王族の一員である。だがそれを認めるわけにはいかず、かといって任務の内容を話すこともできない。 固く口を閉ざしたアッシュに対して行われたのは容赦ない暴力と、拷問紛いの尋問。 さすがのアッシュも命の危険を感じたとき、頭に直接響いてくる声を聞いた。 それに導かれるまま引き起こしたのは、強力な超震動。それは一瞬で周囲の建物が崩壊するほどの威力だった。 そこまでを覚えているのは、いい。 だが、それは三日前のことなどではないはずだった。アッシュの記憶の中では、少なくとも一年以上前のはずである。 (これは…この記憶は、何だ?) 超震動の瞬間。その時見たのは、光の中、佇む金色の… 「アッシュ?」 シンクが怪訝そうに声をかける。 記憶が混乱している。 死んだはずの自分。ローレライとの会話。 (ローレライの力、か…?) 「まあいいや、とりあえずさっさと動けるようになってよ。次の仕事が待ってるんだからさ」 「…どこへ行く?」 「タルタロス、だっけ?あの陸の上をうろちょろしてる船」 その言葉の続きを聞かなくとも、アッシュには覚えがあった。 (…時は廻る、か…) アッシュに背を向け、部屋のドアに手をかけたシンクが低い声で呟く。 「大事な大事な導師イオンを、お迎えに行かなくちゃね。」 イオンが生きている。シンクも同じように。そして自分も。 アッシュは確信した。自分は今、過去を繰り返している。 「ローレライ…何をさせるつもりだ?」 これが夢ではないのなら、あるいはこの未来の記憶≠ェ間違っていなければ、世界は再び混乱し、ヴァンと対峙することになる。 またそれを止めろということだろうか。 それとも… 「くっ…相変わらず随分と軟弱な、身体だ」 無理やり身を起こす。身体のあちこちが悲鳴を上げる。それでも、アッシュはベッドから降り立った。 確かめなければならないことがある。 「二人、と言ったな。ローレライ…」 今度こそ、約束は果たせるのだろうか。 |