promised tune



「うわあああああっ!」

身体が引きちぎられそうな衝撃が襲う。
懸命にルークが目を開くと、そこは見慣れた屋敷の中庭ではなく、辺りは金色の光の渦で痛いほどに輝いていた。
「なっ…ここは?」
そして遠くに人影が見える。その方向に目を凝らし、ルークはぎょっとして身を引いた。
佇んでいるのはどう見ても、自分。しかしその髪は短く、腕に何かを…誰かを?大切そうに抱きかかえている。
「あれって…俺?」
突然渦巻いていた光の一筋が湧き上がり、人のような形を取る。
髪の短い自分が、何かを呟いた。

ローレライ…

「ローレライ?」
その言葉を繰り返した途端、いつもの頭痛が襲ってくる。
ローレライと呼ばれた光は、ゆっくりとこちらを指した。
「え?」
もう一人の自分がそれを追う様にこちらを見る。

「っ…!?」

鏡を見るように自分と目が合った瞬間、頭の中に何かが激しく流れ込んでくるのがわかった。それはまさに、記憶の奔流。
「何だよ、これ…これは…俺で、でも…俺は…俺は…」
きつく目を閉じる。それでもなお、流れ込んでくる記憶は、想いは、止まらない。
レンズの焦点をあわせるように、その記憶は自分の中に重なっていく。

…ルーク。聖なる焔の光≠

「どうして…」
呟きは自分の唇から漏れたもの。
しかし、それが誰に向けた言葉なのかわからなかった。
目を開ける。
遠くにいたはずのローレライと呼ばれた光が、今はすぐ目の前にいた。
ビッグバン、という言葉が頭を過ぎる。
その意味をルークは既に知って≠「た。
同位体のレプリカがオリジナルと融合する現象。
(だって、俺は…)
しかしルークを見たローレライは、ゆっくりと首を振った。

私は全てを託そう…お前なら、お前たちならば、今度こそ世界を解き放てるかもしれないのだから…

(もう、終わったはずじゃないのか?)
世界は変わった。大地は魔界へ降下し、預言は無くなり、アッシュは…
「…!」
ハッとルークは自分の腕を見下ろす。
そこに抱えていたはずのアッシュの姿がない。
「アッシュは?ローレライ、アッシュはどうしたんだ!?」
アッシュ。その名を呼ぶたびに、胸が苦しくなる。
ローレライは何も言わず、その指をルークの左目に伸ばした。
触れられた瞬間、焼けるような痛みが走る。
「ぐぅっ…」
ルークは思わず左目を押さえ屈み込む。その足元がどこかに向けて動いているのを感じ、右目だけでローレライを探した。
しかし辺りを包む光はしだいに薄れ、ルークを突き放すように景色は加速していく。
「ローレライ!」
声を上げても応える者はいない。
「……アッシュ…」
何度も、何度もその名を呼ぶ。
「一人に…するなよ。約束しただろう、どうして…」
自分はどこへ行くのだろう。
アッシュはどこへ行ったのだろう。
ローレライは何を望んでいるのだろう。
ぎゅっと閉じたルークの瞼から、幾粒かの涙が零れ落ちる。
そして、意識すらも闇の中へ落ちていった。




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