あえて雪山でやってみたこと

「うぁ、寒ぃ〜…」

吹き付ける雪に身を縮めながら、ルークが悲鳴を上げた。
ケテルブルクの北口を一歩外に出ると、そこには真っ白な平原が広がっている。
雲に半ば覆い隠された山、その裾野に広がる黒い森も今は吹雪に霞んでいた。

「ここまで吹雪けば寒いのは皆同じですわ。レベルアップのため、頑張りましょう!」
「えー、レベルよりお金稼ぐほうが大事だよぉ。」
「ここの魔物は貴重品を落としてくれますからねぇ。実験材料を確保しておきたいところです。」
「ルーク、大丈夫?」
「うん、俺は…」

へそ出し衣装のルークはマントをぎゅっと身体に巻きつけ、ちらっと横を見る。

「うぅ…わ、わかっててもやっぱり…キツイな。」

視線の先には、真夏のビーチが似合いそうな姿があった。
唇が紫色になりかかっているガイは、何故か水着。
水着と言っても普通のものよりも服に近い形をしているのだが、それにしても寒さに対しては無抵抗すぎる格好である。
ケテルブルクのスパからそのまま出てきたガイは道行く人々の好奇の視線を一身に受け…そのまま街を出て来たのだった。

「…ガイ、この雪の中その格好はいくらなんでも無茶だと思うわ。」
「ティアの言うとおりですわ。いくらスパでのぼせたからとはいえ…」
「ほんとだよ。ガイってば、スパで脳ミソ煮えちゃったんじゃないの?」

女の子3人にあっさり切って捨てられ、涙目のガイはガタガタ震えながら声を絞り出す。
街を出るときは『ライフセイバー用の水着だから生地もしっかりしてるし動きやすいからいい』と笑っていたが、今はもう全身凍りつきそうな状態である。

「俺もあの時はいけると思ったんだよ!…というか、誰だ『ガイならこれで雪山行けるって☆』とか言ってたのは…!」

その声もかき消しそうな寒風の中を、一行は魔物を求めてうろうろと歩き彷徨う。
防寒着にもこもこの耳あてをつけたアニスが、不審そうにガイを見上げた。

「えー?誰もそんなこと言ってないよ。」
「そうね、スパから上がる時に皆ちゃんと止めていたと思うわ。」
「でも俺は聞いたぞ!?『普通のフィールドでやっても面白くないし』とか何とか…」

ガイの言葉に、一同が顔を見合わせる。

「それっていわゆる、『天の声』というものじゃないかしら?」
「ガイ、幻聴が聞こえるくらいおじーちゃんになっちゃったわけー?」
「でも…あとここにいないのはアッシュくらいですけど…まさかアッシュが?」
「いやぁ、彼はそのころ子供が転んだ拍子にルークの水着をずり下げたのを見て鼻血吹いてましたからねぇ。ガイなんて眼中に無かったと思いますよ。」

ナタリアが首を傾げると、並んで同じように首をかしげたジェイドがさらりと続ける。
自分の名前に反応したルークが、眉根を寄せて顔を上げた。

「ん?アッシュってスパに慣れてなくて湯あたりしたって言ってなかったか?」
「あーあーあー。そうでしたそうでした、湯あたりでしたね。」

わざとらしく笑ったジェイドがひらひらと手を振る。
この会話もエンカウントを求めて辺りを歩き回りながらのものであるが、動きの鈍くなったガイが徐々に後ろのほうへ下がり始めた。

「まぁそれにしても、このままこの平原で『ドキドキ☆生着替え』なんてしたらあなただけじゃなく全員まとめて凍死しかねませんからね。あの山の陰まで持ちこたえてください。」

指差す先には小さな森。
確かに風は僅かに防げそうだが、やはり積もった雪が深く地面を覆っている。

「いぃぃいや、それよりもケ、ケテルブルクまで帰ったほうが近…」
「ガイ、頑張れ!何なら俺もちょっと脱ごうか?」
「や、やめておいたほうがいいと思うわ、ルーク…」
「ティア、表情合ってないよ…」

ガイの手を引き、あるいは背中を押し、一行は吹雪の中を突き進む。

「あそこまで走ったら暖かくなるって、たぶん!」
「る、ルーク、それは逆に風を切って寒…寒い寒い寒い!」
「はっはっは、若いっていいですねぇ。」
「あ、魔物発見!」
「今度こそレベルアップですわ!」
「トゥエ レイ…」

「だから俺の意見を聞いてくれぇぇぇぇ!(涙)」




ガイだけ水着を着せて真っ先に雪山に連れて行きました。
いえ、でも、ガイはお気に入りキャラですよ。