キノコロードにて
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「ルーク!」 怪しげな胞子の漂う森の奥から聞こえてきた仲間の声に、ルークは安どのため息をついた。 さらに、目当てのキノコが見つかったという知らせに顔をほころばせる。 「なぁ…中って、どんな感じだったんだ?」 体に降り積もるようについた胞子を払い落す様子を見ながら、ルークは首をかしげる。 「うーん、まあ変わってるっちゃ変わってるが…」 「そこらじゅうにキノコが生えている以外は普通の森と変わりませんわ。」 「気持ち悪いくらいキノコだらけだったもんね。」 ナタリアもアニスもげんなりした表情で呟く。 興味を抑えきれないのか、背伸びをするように中をのぞくルークの頭をガイがぐしゃぐしゃと撫でた。 「なんだ、行きたかったなら早く言えよ。」 「あ、なあアッシュ。ちょっとだけ覗いてきて良いか?」 「何で俺に聞く?」 申し訳なさそうに振り向いたルークに、イラッとした表情を隠さずにアッシュが答える。 「だってさ、なんかすげー聞きなれない鳥の鳴き声とかしたんだぜ。ぎぃぃぃやぁぁって。」 ルークの一言に顔を見合わせたのはジェイドたちである。 「…おや、そうでしたか?(それはきっと…単なるガイの悲鳴ですが。まぁ子供の夢を奪うほどのことではありませんかねぇ…。)」 「えー、別に普通の魔物しかいなかったよぉ?(だいたいティアに抱きつかれて悲鳴上げるなんて、男としてサイテーだよ、ガイ。)」 「あは…ははっ…(いやまあ、そりゃティアに抱きつかれるのは嬉しいんだけどさ、何ていうかこう…反射的に。)」 「そ、そうね…(だ…だって仕方ないでしょう?目の前にいきなり胞子を吹きつけられたら、誰だって驚くわ。)」 小声で突きあう仲間たちを尻目に、木の上でミュウがうきうきとルークを呼んだ。 「ご主人様ー、ここからだと遠くまで見えますの!」 「ホントか!?」 ちょうど太い枝の張り出しているところへ向けて、ミュウはルークを引っ張り上げた。 「行きますですの!ミュウういんぐーーーーー」 「くだらん…俺はもう行くぞ。」 「アッシュ、ちょっと待ってくれよ…っと。」 踵を返したアッシュに呼びかけようとしたとしたルークだったが、枝の上に積もった胞子に足が滑る。 「と?と、と、とととととううわぁぁぁぁ!?」 『ルーク!!』 一気に地面へ落下することは辛うじて避けられたものの、一度片手でしがみついた枝はしなり、より反動をつける形でルークは宙へと放り出された。 「っ…!」 慌てて駆け寄ってくるガイたちがスローモーションで見えたが、とても助けが間に合う位置ではない。 もうダメかもしれない。 これまでの冒険の日々が走馬灯のようにルークの頭を過る。 ドサッ! 激しい震動。 しかし打ちつけられたと思った体は、その寸前で何かに抱きとめられていた。 「チッ…」 耳元で聞こえた舌うちに、ルークはそっと目を開く。 視界に飛び込んできたのは、流れる真紅の髪だった。 「…あ……アッシュ…?」 慌てて駆けつける仲間たちも、二人の様子にホッとした表情である。 「ルーク…!」 「ルーク!大丈夫か!?」 「うひゃ〜、アッシュ、やるぅ。」 よっぽど驚いたのか、涙目のルークはお姫様抱っこで受け止められたまま、ふるふると震えている。 「う…うぅ…アッシュうううぅぅっ!」 「く…こ、こら、離れろこの屑!」 がっしりと抱きつくルークを避けるようにアッシュは首を振るが、その腕はしっかりとその体を抱きかかえたまま。 「あの瞬間に反応するなんて、さすがですわアッシュ!」 「いやぁ、仲良きことは美しきかな、ですね。」 「違う…!」 ルークがどうやら無事そうだと胸をなでおろした仲間たちは、ほほえましくその姿を見守ることにしたようだ。 腕を組んだジェイドが訳知り顔で呟くのを睨みつければ、横からはガイの声。 「まあまあ。アッシュ…俺、代ろうか?」 「………断る。」 「あっしゅ…」 まるで猫のようにすりすりと胸元に頬を擦りつけてくるルークを、それでも離そうとしないアッシュだった。 「おっと…。」 「へー。」 「あら?」 「……。」 「ほう…。」 ガイ・アニス・ナタリア・ティア・ジェイドそれぞれじっと見つめられ、居心地の悪そうなアッシュは心なしか頬を赤くして叫ぶ。 「かっ、勘違いするなよ!俺はただコイツが早く落ち着いたほうが話が早いと…おい、人の話を聞けっ!」 「もー。びっくりして損したよ。」 「……複雑だわ。」 「じゃあアッシュ、しばらくルークを頼むな。」 気づけば各々の後姿が遠ざかっていく。 「ぐ…納得いかん…!」 ルークとは別の場所に行こうとしていたことをすっかり忘れ。 一番後ろをルークを抱えたまま歩きながら、アッシュは盛大に眉根を寄せた。 |